世界との折り合い・世界の変革

ゆうべBShi『わたしが子どもだったころ 川上未映子』を見ていたら、一緒に見ていた夫が「これ面白い?」と言う。彼がそういうときはたいてい、彼自身は「面白くない」ときだ。
案の定、「なんか見れば見るほどこの人が嫌いになってくる」と不快そうな顔。私はといえば、「子どもって……」と一般論っぽく言ってしまうところは多少違和感があった。けれども、場面場面では、こんな環境でこんなことがあったらこういう気持ちになることもあろうよ、と思ったり、小さい頃にもし身近な人が亡くなっていても、彼女のような哲学的な問いは浮かばなかったんじゃないか、と思ったり、彼女のおばあさまに焦点が当たっているけれど、お姉ちゃんもええ子やなあ、と思ったりしていて、特に不快ということはなかった。ということを話して「でもこの人の小説面白いよ」と、ぜんぜん噛み合っていないフォローをした。

その後も話をしていると、夫が「世界に折り合いをつけなくてなおかつ世界を変革できる人は実業家。折り合いをつけずに、自分は世界を変革できると思って立ち向かいながら世界を変革できないドン・キホーテが作家な気がする」と発言。面白いことを言うなあ、と思ったが、小説は、たぶん直接的には新聞やテレビで報道されるような事件や変化を起こしたりはしないけれど、人の考え方・感じ方や生き方を変えてしまう怖さと素敵さを持っていると実感として思うので、「世界」を何と考えるかによっても違うと思うが、半分くらいは賛成できないのだった。

夫は、川上氏のおばあさまについても、「結局甘やかして、彼女のやりたいようにやらせてたからいい印象なんでしょ」と辛口。「でも、しんどいとき逃げ場みたいな人がいるっていうのは、大事なことだと思うよ」と反論した。

夫に彼女は結婚しているかと訊かれたので、会社員の人か誰かと結婚してたんじゃなかったかな、と言うと、「こういう人と結婚する人は、良識的で心がとても広くて忍耐強いんだろうな〜、大変だろうな〜」とにやにやしながらしみじみしていた。
とりあえず、スルーしておきました。
NHKのこの番組は、川上未映子が喋ってるところは少しでコマ切れで、再現ドラマの方が多い印象だったから、欲を言えば、もっと本人が話しているところを長く見たかった。

『乳と卵』や『わたくし率イン歯ー、または世界』も面白いですがこのなかに入っている短編もとてもいいです。→「戦争花嫁」

早稲田文学1

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