ロンドンのリスや孔雀(クジャク)

ロンドンから日本に帰ってきて少し経った。
ようやく日本の生活にも少し慣れてきたけれど、イギリスの食べ物の方が口に合うし、いつもロンドンに帰りたい帰りたいと思っている。
一方で、言葉が全部聞き取れるTV、夜遅くまで何でも買えるコンビニ(コンビニエンスストア)、かゆいところに手が届く品を置いている100均(100円ショップ)、自分でシップメントーー発送元、宛先、各品物の分類品目名(検索して検討・決定するのが苦手だった)・重量・原産地・個数・価格などを一覧書類にするものーーを作らないで利用できる宅配便など、日本の便利さに再び慣れて易きに流れやすくなっている自分自身が怖い。

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すぐにロンドンに帰れるわけではないので、ランダムにロンドンのことを思い出しながらこの1日1日を乗り切っていきたい。

さて東京では新型コロナウイルス(Covid-19)感染拡大に関する緊急事態宣言が9月12日まで延長された。不要不急の外出を避けるのはロンドンでのロックダウンと同様だけれど、買い物時や電車に乗った時に人出の多さを見ると、ゆるいなあ、と思う。
けれども、ロンドンでは一番厳しい行動制限がなされた2020年3月から7月までの最初のロックダウンの時でも、実は「1日1回の生活必需品の買い物」とともに「1日1回の運動外出」がはっきりと認められていた。

なので、レストランやカフェ、パブはもちろんスーパーの食料品売場と薬局以外のほとんどの店が閉まってしまい、スーパーの棚はほぼすっからかん、服や電気製品もオンラインでしか買えず、バスや電車などの交通公共機関はどうしても必要な時以外は乗車禁止といった不便はあっても、そんなに息苦しい感じはしなかったのだった(個人の感想です)。20210901063034

もっともこれは、緑や花が豊かで広く、ところどころ歴史的建造物が残り、リスや場所によっては孔雀(クジャク)などが走ったり歩いたりしている公園があったからというのも大きいだろう。初期のロックダウンでは人間は公園内で立ち止まったり座ったりしてはならなかったけれど、それでも1日1回運動のために公園に外出できることは保障されていたので、今の日本と違い「これは不要不急の外出か?」と迷い、考え、疲れることはなかった。

各公園では、鴨や白鳥など野生の水鳥については、餌をやるな、あるいは全粒粉のパンはいいけれど白パンはだめなどと餌をやる注意事項が案内板に書かれていた。
リスについての注意は見当たらなかったので、時々リスにローストされていない無塩のナッツをやっていた。他の人たちもナッツなどをやっていたので、リスにとっては入れ食い状態というか食べ物に困ることはなさそうに見えた。

 

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とあるリスにカシューナッツをやってもヘーゼルナッツをやっても見向きもせず、アーモンドをやると飛びつき後ろ足で立ち両前足でしっかりと握りしめて一心不乱に食べ始めた。ほかのリスも寄ってくる。あーなるほど、リスはアーモンドが好きなのかと思って次に出会ったリスにもやってみると、その子(本当は私より実質年齢が上かもしれないがついこう呼んでしまう)はアーモンドにはまったく見向きもせず、胡桃(くるみ)にばかり食いついている。私はリスというものをひと括(くく)りにしていた自分の誤りに初めて気づいたのだった。人間だったら、あの人どんな食べ物が好きかな、肉かな? 魚かな? などと自然に考えていたのに。

リスがいる、柵の中で緑が生い茂り人があまり来ない芝生には、リスだけでなく鳩もたくさんいた。

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英語には「鳩の中に猫を置く」(Put the cat among(amongst) the pigeons.)という言葉があり、それは爆弾発言をしたり大騒動を引き起こすような行動をとることを指しているそうだ。
けれども少なくとも目の前で「鳩の中にいるリス」は、そもそも猫ではなくリスであるせいもあるが、大騒動を引き起こすこともなく、鳩集団にふぉー、ふぉーと脅され、時に羽ばたかれたりどつかれたりして、鳩がいなければ楽々食べられるであろうナッツまで次々に取り逃がしていた。他のリスに比べても痩せていたので、要領が悪い個体なのかもしれない。平和の象徴の鳩がリスを威嚇するなんて、思ってもみなかった。
かと思えば、カサカサと袋がこすれる音を聞いただけで「くれるの? 餌くれるの?」みたいにすっ飛んできて小首をかしげ、もう何ももらえるものがないと悟ると「チッ!」と舌打ちせんばかりに踵(きびす)を返しサッと走り去るドライなリスもいるのだった。


孔雀が「ケーン!」と甲高い声で鳴いたり、時に塀や木に登って悠然としていたりすることも、知らなかった。
動物や鳥の言葉はわからないので、勝手にそれらの姿を見てこちらはなごんでいた。わからなくて良かったと思う。

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