ヘレン・メリルSayonaraコンサート

友人○ちゃんが急遽行けなくなったチケットを譲ってくれたので、五反田ゆうぽうとホールに、「ヘレン・メリルSayonaraコンサート」を見に行った。
ヘレン・メリルの名は知らなくとも、ハスキーボイスの彼女が歌う「You'd be so nice to come home to」を耳にしたことがある方は多いと思う。私もこの曲は大好きだ。デビュー65周年の彼女は79歳、コンサートの共演はスコット・ハミルトン(ts)、テッド・ローゼンタール・トリオ(テッド・ローゼンタール(p)、スティーブ・ラスピナ(b)、テリー・クラーク(ds))、スペシャルゲストとしてウォーレン・バシェ(cornet)。
ベース以外はロマンスグレーの楽器陣だが、演奏し始めるとパワフルな感じに圧倒された。サックスとコルネットが印象的な「Tea for two」、曲名不明だがアップテンポでドラムの手がものすごくよく動いていた二曲目に続き、「You don't know what love is」、友人沢木まひろさんのデビュー作(10月に本が出るらしい)と同じタイトルの「But beautiful」ではサックスのうねる低音に早くも泣けそうになった。最近、近所の高齢者の方との間にちょっとぎくしゃくすることがあったのだが、やはり長年培われた技術や知識には敬意をもって接するべきだなあ、と思いなおしてしまうくらい、良かった。ゆっくりな曲でも速い曲でも、スコット・ハミルトンの周りは違う空気の層で包まれているみたい。また、みぞおちや下腹から頭の後ろまで、こちらの体のあちこちに音楽が響いてくるのだ。MCはローゼンタール氏が担当していたが、英語力不足であまり聴き取れなかったのが残念。コルネットも、曲により波があるが、高音がスパーンと響くところはとても良かった。「ベサメムーチョ」は日本向けサービスか。
休憩後18:15から後半が始まり、さらに楽器だけの演奏があってまだかな、まだかな、という気持ちが最高潮に達したころ、ヘレン・メリルが登場。袖が透けて花か何かの模様が入った黒いマーメイドラインのドレスがよく似合う。髪はミディアムのボブといった感じですっきりしている。
曲名がわからないが、アーイゲッ、で始まる軽快な曲を歌い始めると80歳近いことが信じられないくらい声がよく出ていた。伸びやかで張りも奥行きもある。最近カラオケで声が出なくなってきて、昔より低い音で声を裏返さなくてはいけなくなっていることをもう年のせいにはできないなあ、と反省した。
「Summertime」ではディミヌエンドされた音が細いがよく聴こえる音で長く保たれていることに感心し、「Gee baby ain't I good to you」やスツールに掛けての「Love me tender」では、ハスキーな声のなせるコンマ何秒のひっかかりやビブラートの色気にやられた。「My favorite things」は映画「サウンド・オブ・ミュージック」と違いアップテンポな4拍子で野性的な味わいだった。
途中で退場していたスコット・ハミルトンとウォーレン・バシェが戻ってくると、客席お待ちかね(?)の「You'd be so nice to come home to」。アンダーのア〜ンやチルドのチ〜がスウィングしている。音が上がるオール、のところでは頭が後ろでピンと吊られたように反っていた。ソーナイス、のところでヘレン・メリルは客席に向かっててのひらを差し出すなどサービス満点。間奏で彼女自ら手拍子をとってくれたので、客席も安心して(?)皆、拍をとり、大盛り上がりでした。アンコールは「'S wonderful」。ヘレン・メリルはここでも膝を曲げたり鳩が出そうなくらいぱっと手を拡げてみせたりしてくれた。スタンディングオベーションのなか、お開きとなった。
○ちゃんと旦那さん、本当にありがとうございました。

ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン

ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン