桃まつり2 『バーブの点滅と』など

桃まつりは、ほかの作品もそれぞれ味わいが違った。

迷い家』(竹本直美監督)は、今どうしてこの作品をつくるのか私にはよく理解ができなかったけれど、画面はきれいだった。河井青葉の凛としたわびしさも忘れ難い。

『Shoelace』(福本明日香監督)は男の愛人(ともさと衣)と娘(滝澤史)が、寂しさを共に抱えることもあってか葛藤もなく意気投合するというのが、ひねくれた私の目には(そう簡単にいくかなあ)と映ってしまった。男の妻つまり娘の母が話にもほとんど出てこないのも一因かなと思う。でも「あまりないかもしれないけれど、ないとも言い切れない」ことを映像で「ありうる」と示してくれた気もする。愛人のダメ元カレ(杉山彦々)が良かった。

バーブの点滅と』(増田佑可)は『テクニカラー』以外で特に心に残った作品。「バーブ」は釣り針の「返し」の部分だそうだ。掃除機に体の大部分が吸い込まれてしまう女性と、彼女と同居する男性の話。最初は、カフカの『変身』を読んだときとは違って「鋏で切ればいいんじゃね?」という気持ちが拭えなかったけれど、見ているうちに、これは引きこもりなどにも通じる話だなと映画の世界になじんでいった。掃除機のホースから両手の指だけ出ているのがヤドカリの脚みたいに動くところなど胸に迫る映像もある。見終わったあとで夫が「女性がどんどん掃除機に吸いこまれていくのは男性が女性を必要としなくなったことの心の表れでは」と言ったのが怖かった。わたしは女性の心象の方かと思っていたので。


それにしても、「かぼちゃが入っていたら味噌汁を食べない」と男性が言ったり、別れた女の部屋に来た上着を元カレが脱ぎ散らかし、それを元カノが黙って畳んであげるシーンが普通に映画に出てきたことに、一番違和感を持ったと言えば持った。どのくらい意識的に監督さんたちはこれらのシーンを出しているのだろう。

公式サイト:http://www.momomatsuri.com/