美術館工事の裏側

一か月ほど空いてしまったけれど、特に何もないです(笑)。

過日、映画『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』(ウケ・ホーヘンダイク監督)を見た。
改築のため5年以上休館中の同美術館(国立だが1995年から財団運営)工事の裏側を描いたドキュメンタリーだ。


地域住民(NGOのサイクリスト協会)の力が強く、その反対により美術館・建築家側の新要素を含む案が却下されたのには驚いた。
ほかのTV番組で初めて知ったのだけれど、細く狭い道が多いオランダの人にとって自転車というのはものすごく重要な交通手段らしく、美術館を貫いてこれまで自転車で通り抜けできた道が通り得なくなるというのは、住民にとっては大問題だったようだ。

民意が採用されるのはいいことだ、と素直に思える展開ではなく、どんどん案が改変されて怒り、落胆する建築家達が気の毒だった。彼らの一人の「これは民主主義ではない。民主主義の悪用だ」という言葉も、大袈裟とは思えなかった。

こんなに揉めることが予想されるなら、あらかじめコンペの建築設計条件に「美術館を貫いての自転車通り抜け」を挙げておいた方が良かったのではと思うくらいだった。でも、そこまでは予想できなかったのかもしれないし、通り抜けを犠牲にしてでも新たな美術館で示したいものがあったのかもしれない。


民意の採用自体は望ましいことだが、より早期からの&期限最優先の調整も必要だと思った。やはり最優先順位を置くべきは「早期開館」のように思える。その意味では、各年度ごとの進捗状況の厳しいチェックが有用なのかもしれない。ほかにも館長の決断など、えっと思うようなこともあった。


絵画の修復や日本から金剛力士像を購入するプロセス、新装開館時の展示方法の検討、警備員の心情なども見られて面白く、館長や一人一人の学芸員もいろいろ人間臭い。
日本の国立美術館についてのこのくらい赤裸々な映画は、かなり先まで見られないのではないかと個人的には思った。

公式サイト:http://ams-museum.com/