すてきなハプニング

洞口依子映画祭では、15日の夜、『digi+KISHIN 洞口依子(vol.1〜vol.3)』が上映された。


洞口依子映画祭公式サイト:http://yoriko25ans.com/
(本日20日まで)


vol.2については既に見ていたけれど(http://d.hatena.ne.jp/rvt-aa/20091114/p1)、ほかは初めて。
さあ始まる、というときに、袖の折り返しがビビッドな花柄である黒いコートに身を包んだ洞口さんご本人と関係者の皆さんが和やかに入ってこられた。
予想外のことに息を呑んでいると洞口さんが、スクリーンのそばで、観客たちに明るく挨拶をしてくださったのだ。
いえ、お礼を申し上げるのはこちらの方です、と胸のうちで言いながら会釈と拍手をする。


そのあと、何と映画の制作者である篠山紀信氏まで登場された。
お二人が会うのは偶然のことらしく、ご一緒に映画を見ていらした。


vol.1では、現在の洞口さんが、緑あふれる庭で白地に紺の模様の浴衣を着、日傘をさしてシャワーの水を浴びる笑顔が、陽射しと同じくらい強く光っている。15歳のときや阿蘇での写真も多く、あのショットはないのね、というのはあったけれど、激写文庫『洞口依子――8年が過ぎた』に写真とともに載っていた洞口さんのコメントや、いとうせいこうさんのあとがきも思い出した。


vol.3には、前二つに比べると南の妖しい花のような「陰」の表情や、何かを訴えるあるいは問いかける、という言葉にもおさまりきらない、こちらを見据える視線の写真もたくさんあった。花を髪飾りにして微笑む写真も懐かしかった。現在の写真には静謐さのなかにオフィーリアを想像して胸が少し苦しくなったものもあったが、あとで考えてみれば、生まれる前も(某映画のように場合によっては出産するときも!?)似たような状態だ。
vol.1からvol.3まで通しての上映ですごく立体的な構成になる感じ。そして胸がいっぱいになった。


洞口さんと篠山さんが映画を見ながら並んで話されている姿には、年齢差を飛び超えた長年の信頼関係と同志的なものが感じられる。
最後はスタンディングオベーションとなった。
劇場でこの日起こったこと、そこに夫と自分が加われたこと自体が、クサい言い方だけれど、映画か小説のようだ。