行ってみないとわからない! 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009 3

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009 2」の続き。
とにかく目だけでなく、耳、鼻、足の裏など五感(味覚はつるんとしたのど越しが素晴らしい布海苔入りのそばや、米、ツアーのお昼ご飯などでだが)で感じる作品が多いので、現地に行くことをお勧めします。というか行かないとわからないです。
ではまた印象的だった作品を個別に。

・内田あぐり+内田亜里+武蔵野美術大学日本が専攻内田ゼミ《OUR HOME》絵の筆致が、茅葺屋根の細い萱が梁のそばからはみ出ている感じによく合っていた。


日比野克彦《明後日新聞社文化事業部》旧莇平(あざみひら)小学校。段ボールの船に入ると小さな灯台みたいなところでオレンジの光が回っていて、この光が内部を照らすとものすごくきれいだった。アサガオのしおれた葉を摘むとアサガオの種がもらえた。


・リチャード・ディーコン《マウンテン》銀色の巨大ソーセージみたいなものがつながって不思議な形を作っている。やっと本物を見ることができた。しかも表面がぼこぼこしていて優しい感じ。棚田や山の景色も込みで楽しめる。


・クロード・レヴェック《静寂あるいは喧騒の中で》ものすごい高いところにある(写真参照)桐山集落の空家を使ったインスタレーション。赤く光る石、花火のような音とともに青い光が点滅する、銀にも白にも見える格子の柱状のもの、波打つ白い円柱の内側から漏れてくるドライアイスの湯気とオレンジの光などから集合的記憶が喚起される……はずなのだが、私の想像力が及ばず、また、期待が大きすぎたのか、(ここでやる必要があるのか?)という気持ちの方がまさってしまった。ドライアイスの湯気のため畳に水たまりができたり水が染みたりしているのが妙にリアルだった。なぜそれがリアルに感じられるんだろう。わからない。


・マーリア・ヴィルッカラ《TIRAMI SU 3 持ち上げて−−行ったり来たり》空家に住んでいた姉妹の話をもとに、地震でひび割れた壁や階段、深靴(わら靴)などに金箔が塗られて光っている。金色のところはまさに、大切なあるいは忘れてはならない記憶の残像、という感じがして良かった。でも、階段のところは上ったときには気づいていなかった。農作業等に使われる古そうな機具などもたくさん残っていて、人の留守に家を探検している気分に。


・塩田千春《家の記憶》古民家の空家じゅうに黒い毛糸が紡がれ張り巡らされている。毛糸だけでなく木に打ち込まれたおびただしい数のタッキングの針を見ても、作家と一緒に作業された方のも含め多大な労力が感じられるが、養蚕を営んでいた家なのになぜ黒い毛糸なのか、といった疑問も浮かんだ。作家が感じ取ったほどに、家や住人の記憶が見る側に伝わっているだろうか? 私はアンテナの鋭敏さが足りなかったようだ。それでも、ドアノブを中心に毛糸が編み込まれているところはぐっときた。


・クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン《最後の教室》入口を抜けると、藁の匂いが鼻に飛び込んでくる。廃校となった旧東川小学校(体育館か講堂だと思う)の暗くて巨大な空間に、星のように天井からたくさんの電球が吊り下げられ、扇風機が置かれた木のベンチが不規則な方向にいくつも並んでいる。やわらかい藁を踏みしめながら、また、ベンチに座って、あるいは舞台の上から、光を見つめる。その間もずっと藁の匂いをスーハースーハー嗅ぐ。この匂いがどうしても嗅ぎたかったので、何度も深呼吸した。夫にも目で鼻で足の裏で体験してほしくて、また来てしまった。

 前回(2006年)来たときはものすごく忙しいときに来て、2階、3階のも含めてこの作品が、ふだん抑え込んでいるものを引きずりだしてくれることにほっとした覚えがあるが、今回は、受付をやっておられる年配の方(たぶん卒業生の管理人さん)の素敵な笑顔や、手を伸ばせば届きそうな低いところに電球が下がっていること、白い布の間に置かれた棺のような透明なケースの中で光る蛍光灯が、一つ一つさまざまな方向を向いていて、雪や死の恐怖だけでなく安らぎや遠くから見守る雰囲気も思い起こさせること、積み重なった椅子の影、などが印象的だった。


見たいと思いながら見られなかった作品もまだまだあるのは残念だが、ふだんインスタレーションに文句たらたらの夫が「予想外に面白かった。つまんないときのために持って行った本も、結局1ページも開かなかった」と言ったので良かった。

芸術祭終了の9月13日までにもう一度行くのは難しそうだが、「秋季特別展」(2009年10月3日〜11月23日)でも今回のチケット(パスポート)が使えるとのことなので、そのとき行ければまた行きたい。
ただし、作品は夏の芸術祭期間のみ展示のものもあるようだし、「秋季特別展」では土日祝日のみ鑑賞可能となるものもあるとのことなので、公式サイトで確認しないと……。
公式サイト:http://www.echigo-tsumari.jp/2009/