横浜トリエンナーレ2

長いので分けた。横浜トリエンナーレの続き。
三渓園
中谷芙二子:霧の彫刻。人の気配でピンクのライトがついたりセンサーの湿度感知で霧が発生する。緑のなかで冷たい霧を浴びるのは気持ちいい。

内藤礼:電熱器の熱で天井から下がった透明な糸だかグラスファイバーだかが揺れる。透明な糸に水滴みたいなものがついていたのが美しかった。
・ティノ・セーガル:古民家の薄暗い二階を見て下りてくると、明るい畳の上で男女(ダンサーらしい)が抱き合い、睦み合っている。それを続いている隣りの部屋から人々が腰を下ろすなどして見る。近くの老夫婦が畳の数を数えていたのが可愛かった。夫はそれを「照れ隠しだろう」と言っていた。明るいところで音もなくゆっくりと行われるダンスはとても美しく官能的。家の外の格子戸越しに覗くのもまた一興。

日本郵船海岸通倉庫
 見ごたえがあった。音声ガイドは借りて良かった。
・マリナ・アブラモヴィッチ:「SOUL OPERATION TABLE」。高い梯子のついた手術台を、さらに高いところから、赤、、銀、黄などに着色された金属板が照らす。蛍光灯や柱が金属板に映るとまったく違うものに見える。好き。登ってみたかった!
・ジョーン・ジョナス:神話に素材を求めながらも現代を考えて踊るビデオとコヨーテの剥製。
小杉武久:色とりどりに光るネオン入りの箱や電子機器から虫や蛙の声が聞こえると、それだけで親しみが増すから不思議。「音」情報が自分にとってもつ重要性を再認識。好き。
中西夏之:この紫色とクリーム色を見ると彼だなあ、と思う。砂鉄なのか、砂がきらきら光っている。垂直方向と横方向の時間。
オノ・ヨーコ:1965年と同じ、服を人に切り取らせるパフォーマンスを2003年にもやるというのが面白い。
・ロドニー・グラハム:音声ガイドを聞かなければコンセプトはわからなかった。銅鑼にジャガイモを投げるビデオなど。
・クロード・ワンプラー:壁に女性の大きな影が投影される。コンセプトとはまったく違うが、広島平和記念資料館の、人の影が残っている石段(人影の石)を思い出した。
・ヘルマン・ニッチュ:よく見ると人の上に牛か何かを載せて解剖するなど、処刑行為を模した画像のよう。撮影に使われた着衣や絵の具も展示されていて、「残虐さ」と「捏造」という言葉を同時に思い起こした。でも、本物の処刑画像が混じっていても容易には区別できないと思う。
勅使川原三郎:びっしりと敷き詰められた青っぽいガラス破片の上でのダンス。壁にも無数の破片が突き刺さっている。彼は時に痙攣したように、時に力強く四肢を伸ばし、時に崩れ落ち、ありえないような姿勢で止まる。いくら黒い服や靴に身を包んでいるとはいえ、怪我をしないのが不思議。でも左手の指に血が一筋。ヘルマン・ニッチュの展示で見た「血」を思い出しながら、目の前で起こっていることのリアルさは強い、と複雑な気分になる。しかし指の血の方が絵の具かも。コーマック・マッカーシーの『The Road』(極限状態で善き者であり続けながら生きようとする父子の話。おすすめ!)を読んだ後ということもあってか、彼が荒廃した地球で生き延び、歩を進める人にも見えてきた。
追記:全体として、もうちょっと日本人の作品があっても良い気がした。あとは、並んで待つことなど、いくら苦手でも違う「時間」に放り込まれたと思って自分を変えてみればさらに面白い体験ができたかも、という反省が残った。

ザ・ロード

ザ・ロード