再構成の美など 「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」展

過日、山種美術館で「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」展(後期)(2月5日終了)を見た。
奥村土牛《城》等に、(見たもの、認識したものそのままじゃ駄目なんだよなあ。再構成して描かないと)と思う。
《城》は、見上げたときの圧倒される感じが体感できた。また、空のすっきり・くっきりした青と、城の白及び柔らかな灰色のグラデーションから成る幽玄さが併存しているのがあとを引いた。
しかし《城》の青空にある、謎の緑の液垂れは何だ? 烏?


速水御舟《炎舞》も、火の粉など初見(http://d.hatena.ne.jp/rvt-aa/20101022/p1)と違う所に目が行った。


同じく速水御舟の《白芙蓉》も良かった。図録によると「外側から茶墨の隈をつけて滲んだ墨が自然に胡粉のところで止ま」(カ図録『山種美術館創立45周年記念特別展 ザ・ベスト・オブ・山種コレクション』220頁より引用)っているという、淡く黄みを帯びた透けるような白い花びらに、もっと白い筋が繊細に描かれている。そこに花びらの付け根の滲んだ真紅と金色の雄蕊が加わり絵を引き締めている。
茎や葉、後ろの薔薇は黒と灰色のみで描かれているので、真紅の鮮やかさ・あでやかさが白に対するのと灰色に対するのと二重の意味で際立っていた。


福田平八郎《牡丹》は、画面右下の黒っぽく端のみ赤い、何枚か花弁が抜け落ちている牡丹が何とも妖しげだった。全体的に日蔭かつ霧雨の風景のよう。以前印刷物で見た、モダンで簡素な波の絵(《漣》)とは全く違う細密画だった。
この人もちゃんと描ける力がある上で大胆な省略化やデザイン化をしてるのね、と複雑な思いにとらわれた(笑)。