初めての溝の口 久地円塔分水

日曜午前2時からBSフジで再放送している「天体戦士サンレッド」は、くぼたまこと原作の、神奈川県川崎市溝の口を舞台にしたゆるいアニメだ。正義の味方である主人公は血気盛んで単なる不良番長上がり風。敵対しているのか共存しているのかよくわからない悪の組織は、税金を真面目に納め主人公の彼女や近所の人とも仲良く地道に生活しており、町内会の活動にも積極的で先日、悪側のはずのキャラクター「ヴァンプ将軍」が、「リアルに」川崎市高津区の「キラリたかつ大使」に任命されたほど。
(参照:http://www.city.kawasaki.jp/67/67soumu/home/takatu/kanko/event/event_etc_sunred.htm

昨年のある日、その溝の口を初めて訪れた。
直接的には第1期エンディングに出てくる「鶏だんご鍋」を食べに行ったのだが、諸事情によりそれは叶わず、第2期オープニングに戦闘の現場として出てくる二ケ領用水の水門を見に行ったのだった。アニメの舞台などを訪れることを「聖地巡礼」と言うそうだが、私にとってはこれがヴァージン・聖地巡礼となった。

その近くに、「二ケ領用水久地円塔分水」(昭和16(1941)年竣工 国登録有形文化財)なるものがあった。

最初、噴水か何かかと思ってしまったのだが、案内板を見ると、以下の記述があった。

この円塔分水工と呼ばれる分水装置は、送水されてくる流量が変わっても分水比が変わらない定比分水装置の一種で昭和16(1941)年に造られました。内側の円形の構造物は整水壁とも呼ばれ、一方向から送水されて吹き上げる水を放射状に均等にあふれさせ、送水されてくる流量が変わっても、円弧の長さに比例して一定の比率で分水される、当時の最先端をいく装置でした。

シンプルな造形が美しいだけでなく、大きな役割を果たしているのだなー、と見入ってしまった。
見ている間、整水壁の辺りの水の量はそんなに変動しなかったけれど。

ほかにもたくさん説明の紙が展示されていた。それらによれば、多摩川の水を取り入れた二ケ領用水自体は江戸時代にできていて、四方面に、各方面の灌漑面積に応じて分水樋(水門)により分水されていたそうなのだが、川の中央か端かで流れの速さや流量が違い、円塔分水ができるまでは分水量を巡って争いが絶えなかったらしい。

  
平成10(1998)年6月9日に国登録有形文化財になったということで、さすがにプレートが年季が入っていて、文字や枠の金色はおろか緑色もかなり褪せていた。まあそれが歳月を経るということだろう。

この用水の付近には鯉がうじゃうじゃいて、黒いのに混じって錦鯉もいたりする辺りが絵本『スイミー』を思い起こさせた。しかし正直に言えば、(おいしそう! 鯉こく食べたい)が真っ先に思い浮かんだことだった。