みぞおちをきつく掴まれたような  九六式十五糎榴弾砲

靖国神社の境内に、遊就館という建物がある。
過日、花見のついでに夫に誘われて寄ったところ、思いがけずリベットを目にすることとなった。


九六式十五糎榴弾砲(きゅうろくしきじゅうごせんちりゅうだんほう)というこの火砲は、案内板によれば

野戦重砲兵第一連隊第四中隊に所属し、沖縄防衛戦に奮戦したが、糸満市真壁の陣地において昭和二十年六月二十三日全弾を撃ち尽して中隊は砲と運命を共にした。

とのことだ。口径149.1mm、砲身長352.3cm、砲重量4,140kg、発射速度45発/時、最大射程11,900mらしい。


まず目についたのはリベットだったけれど、爆破や被弾の痕の生々しさに気づいて、みぞおちをきつく掴まれたような気持ちになった。アニメや映画でも戦闘シーンはいろいろ見ているけれど、三次元ということもあるのか、硬い金属が鋭角を残したまま布を裂いたみたいに裂けたり無残に割れたりしているのや、被弾して開いた穴の暗さが、まったく比べものにならない感じで迫ってくる。
戦後、米軍に回収され沖縄の在郷軍人クラブに飾られた後、昭和41(1966)年に靖国神社に奉納されたそうだ。


火砲をどうやって運ぶか想像したこともなかったので、砲身の何倍もの長さである脚が後ろについていて、6トン牽引車で迅速に運行したなども初めて知った。中隊の方々のご冥福を祈ること自体が憚られるような、躊躇わずにそうしたらいけないんじゃないの、と自問せずにはいられないような複雑な気持ちだった(最後の写真の左砲は八九式十五糎加農)。


一方で、リベットがついた機械は破損しても美しいと感じずにもいられないのだった。