パイティティナイト1 『digi+KISHIN 洞口依子vol.2』

昨日13日の夜は、洞口依子映画祭のイベントとして『digi+KISHIN 洞口依子vol.2』と洞口依子さんのウクレレユニット、パイティティのドキュメンタリー映画ウクレレ PAITITI THE MOVIE』が上映され、その後パイティティのミニライブがあった。


開場前から劇場前のフロアは人でごった返していて、茶色い髪をフランス人形のようにふわふわくるくるにさせ、白地にオレンジがかったピンクの小花と緑の葉が散った前あきのワンピース(もしかしたらワンピース風なコートかも)をまとった洞口依子さんが不意に現れると、陳腐な言い方だが、妖精が現れたようで、そこだけ空気が光って見えた。


『digi+KISHIN 洞口依子vol.2』は、かつて激写文庫『洞口依子――8年が過ぎた』にも載っていた、篠山紀信氏が撮影したおそらく20年以上前のタヒチでの写真と、光を見つめたり真紅のスリップ姿で畳に横たわったりする現在の洞口さんの写真や動画が、パイティティのウクレレサウンドに合わせてフルスクリーンで映し出されるもの。

昔の、後ろで果汁がぱーっとはじけているような笑顔や裸体には、タヒチの鮮やかな自然がみんな彼女の引き立て役になってしまうような天真爛漫さがあった。

ずっと昔に、女だということもあってドキドキしながら激写文庫を買い、これらの写真を見たとき魅入られるようにページをめくったことや、外国に行ったことがなかったので、上映された写真のなかにはなかったけれど所収の写真を見て(タヒチでは、木が(海にぐんと張りだすかたちで)横に伸びるんだぁ……)と思ったことも思い出して、目の奥がじーんとした。


いろいろなことがうまくいかないと、(なんか私の人生ってもう何もいいことが起こらないんじゃないか?)という気分に陥ってなかなか抜け出せないこともあるのだが、20年以上前に掌に収まるような文庫で見て感激した小さな写真を時を超えて巨大なスクリーンで鮮やかさそのままに見られるなんて、当時はかけらも予想できないことで、やっぱり、いいことはあるんだな、この日だけじゃないけれど外に出るのは大事なことなんだな、としみじみ思った。自分の単純さも感じるけれど。


そして現在の洞口さんの写真には、さまざまな仕事や病気や結婚や音楽を体験されての、底を見た強さみたいなものと深くてより微細なきらめきが感じられた。

昔の写真や映画での洞口さんの表情がこちらの胸に突き刺さってくる、ぶつかってくる色合いが強いとしたら、現在の写真には秘めた強い覚悟とともにこちらの心に深く沁みとおって、毛細血管の先までじんわり広がっていくような奥行きがある。パンフレット所収の、天気雨だろうか、日の降り注ぐなか日傘を後ろにやって浴衣姿で雨を受ける写真もありそうなvol.1もぜひ見たくなる。


というわけでメイン料理に行く前にすでにかなり心が揺さぶられていた。(つづく)
洞口依子映画祭公式サイト:http://yoriko25ans.com/
明日15日夜にも『digi+KISHIN 洞口依子篇』の上映があります。