眼鏡の向こう  

過日、といってもだいぶ前に北品川の原美術館に「原美術館コレクション展」を見に行った。
原美術館自体たいへんにひさしぶりで、建物にツタが絡まっていないなあ、というのと、建物の外壁のタイルはこんなに緑っぽい色だったっけ、というのが第一印象。


米田知子の「見えるものと見えないものの間」シリーズが良かった。
ガンジーやヘッセなどの眼鏡とそのレンズの向こうに拡大される彼らゆかりの文書や写真。眼鏡の形も、浮かび上がる文字などもそれぞれ違う。彼らが何をしたのか、眼鏡が置かれている文書等がいつの何で、拡大されている文章に何が書かれているのかがよくわからなくても、写真として惹かれ、足が止まってしまった。
こういう字を書くんだ……、とか。
そこにどんな思いが込められていたのか、米田知子がなぜそこをクローズアップしたか、は「見えないもの」か。
歴史的背景を知らないと想像できることに限界があるな、と悲しくもなった。


宮島達男の「時の連鎖」も好きだ。ほかの宮島作品もいくつも見たことがあるけれど、空間と色と込みで作品なのだと体で感じた。


奈良美智のアトリエの屋根裏部屋っぽさと絵の具の匂いも忘れ難い。


新潟県の妻有に比べるとささやかだが、芝の緑が鮮やかな庭にもいくつも作品が置かれていて、併設カフェで食事した後に散歩しながら見るのも贅沢な気分だった。掃除をしていた、ごくわずかに殿山泰司に似た職員らしきおじさまが、友人と私に蝉の抜け殻を見せてくださったり、少し作品の解説をしてくださったりした。自分でも蝉の抜け殻を見つけたけれど蝉の種類をまちがえておじさまに訂正された。なんかひさびさに蝉の抜け殻を見たな、と思った。

今月12日(月)まで。
公式サイト:http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html