ボルゲーゼ美術館展

過日、上野の東京都美術館に「ボルゲーゼ美術館展」を見に行った。


ボルゲーゼ美術館は、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿ローマ市北東部に建てた別宅だそうだ。

この人の名前も知らなかったのだが、16世紀末から17世紀を生きたローマ・カトリック教会の最高位にある教皇パウルス5世の甥で、カラヴァッジョなどの作家の能力を見つけ出し、資金面で援助し、たくさんの作品を蒐集した人だという。ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作の彫刻だと恰幅が良く陽気そうで酒好きそうなおっちゃんだ。


ビデオで流れている映像によると、ボルゲーゼ美術館は白亜の館で、特に中が白や金を基調としたずいぶんゴージャスな造りのようだった。作品展示も、女性の肖像画が何枚か固めて飾ってあったり、面白そう。

今回の展示は簡素なワインカラーの壁がバックで、作品も比較的、均等に展示されていたので、本当の展示とはちょっと感じが違うのだろうな、と思ったけれど、そこは脳内で補完した。


「本作品は○○の作品と思われていたが、近年△△の作品と判明した」というものがやたら多かったので、見た作品も、何十年か先には作者が変わっているものがあるかもしれないと思った。

 また、やけに胴が長かったり、赤ん坊の脚がすごく太く長かったりと全身のプロポーション比率がすごく変なものが多いのも特徴的だった。カラー版の『ジュニアガイド』がけっこう充実している。カラヴァッジョは、作品よりも、殺人を犯し逃亡中に描いた作品(《洗礼者ヨハネ》)という事実がインパクトがあった。 


特に印象的だった作品は以下のとおり。
・ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ(本名:ミケーレ・トシーニ)《レダ》:ゼウスが化けた鋭い目の白鳥に誘惑されるレダが振り返っている。

後ろで一つに結った金色がかった茶色い髪からひよひよと細い髪の束がいくつも出ているのが、マンガ『ひだまりスケッチ』(蒼樹うめ)のヒロに少し似ている。

オレンジ、金、黄緑などの瀟洒な柄が描かれた軽やかなマントらしきものとその下の衣服、振り向きざまのあきらめ混じりのような、でもそれだけでもないような寂しい微笑みもあとをひく。


ラファエロ・サンツィオ《一角獣を抱く貴婦人》:個人的な基準ではこの女性は美人に入らないが、袖の濃い赤はビロードのような陰翳がよく出ていて美しい。あと、一角獣がかわいい。黄色いマントと車輪が描かれた聖カタリナの絵になっていたのが修復されたそうだが、修復後のタッチって、元々のと本当に遜色ないのだろうか。

 
・ドッソ・ドッシ《アレクサンドリアの聖カタリナ》:右手は大きさが変だけれど、明暗がくっきりしているのと、目を伏せた表情が良かった。


公式サイト:http://www.borghese2010.jp/index.html 4月4日(日)まで。