ライト・[イン]・サイト展 食事中の方はご注意ください

終わった展覧会だが、今年の2月28日までICC(NTTインターコミュニケーション・センター)で開催された「ライト・[イン]サイト――拡張する光、変容する知覚 展(Light Insight)」は面白かった。
ICC東京オペラシティタワーの4階にある。というのを蜷川実花展を見たときには、私は知らなかった。ICCカフェの割引券をもらいながら気づかなかったという恐ろしいボケ加減だ。

○インゴ・ギュンター《サンキュウ−インストゥルメント》:自分の影がストロボ撮影により壁に固定される作品。広島の平和記念資料館に保存されている、原爆の閃光によりおそらく瞬時に消え去った人の影が映った石(人影の石)を意識しているらしい。実は撮影直前に一緒に行った夫とちょっとだけ口喧嘩していのだが、影は寄り添って仲良さげに並んでいてギャップがあった。子供の頃に「人影の石」の実物を見たときには、影の持ち主が何を思い、考えていたかなどまったく思ってもみなかった、と思った。影だけではわからない。

なお、後日、路上に点々とつづく、乾いて黒っぽい影状になり放射状に広がった人の吐瀉物の痕を見たときの会話。
私「影はともかく、ゲロの痕を見て、直前にその人が何を思っていたか考えるのはなかなかむずかしい」
夫「うん」
私「何を思ってたんだろう」
夫「気持ち悪かったんでは」

○ミシャ・クバル《space-speech-speed》:ミラーボールが地上近くに置かれ、タイトル中の文字の白い活字が闇を舞って宇宙に迷い込んだよう。闇のなかの他作品群を見る前に見たときには、足元がぐらついて浮遊感を体験できた。

●藤本由紀夫《PRINTED EYE(LIGHT)》:網膜に文字を焼き付ける作品。やり方が下手だったらしくGHT(本来はLIGHT)の文字が消えずやり直したかったが、目に悪いかもと思いやめた。

◎エヴェリーナ・ドムニチ&ドミートリー・ゲルファンド《カメラ・ルシーダ:三次元音響観察室》:整理券を得ないと見られなかったがその甲斐はあった。今回最も心に残った作品。音波が水のなかの物質を通り光に変換されて可視化されるらしい。
会場は6分間目を慣らしても全く何も見えない闇。ふだん闇だと思っていたものがいかに光に溢れていたかをまず知った。チリチリ、あるいは幽かな拍手のような音とともに、ガラスの球体にもやっとした白い光の筋が現れ、あちこちで光った。これに比べれば線香花火の火花などくっきりしすぎ、強すぎだ。
夫は脳の神経伝達等の動きに似ていると言い、私は子供の頃に手動でラジオをチューニングし、耳をラジカセにくっつけて雑音のなかからか細く聞こえるモスクワ国営放送の音をとらえたときのことを思い出していた。

(記号は心に強く残った方から◎、○、●です)
参照:http://www.ntticc.or.jp/Archive/2008/Light_InSight/index_j.html

ちなみに東京オペラシティアートギャラリーの「都市へ仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み」展は本日まで開催。
図面が読めればもっと面白いのだろうと思ったが、パンフレットとつるんとした木製積木を用いた模型と設計図からでは、素人には、どのように都市と建築とを調和させているかがよくわからなかった。ノヴァルティス本社屋の図面で、壁面の美しい色とりどりのガラス3層をどのように重ねているか見られたのは面白かった。